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溶連菌の迅速検査は患者さんの14%を正確に診断できない!?

こんにちは、Dr.アシュアです。

突然ですが、一般病院の小児科やクリニックの小児科で一番多く行われている検査はなんでしょうか?

正確な数字はないですがおそらく迅速検査”だと思います。

鼻やのどに棒を突っ込んで検査して、だいたい5-15分くらいで結果がでる、アレです。

 

さて、良く行われているあの”迅速検査”ってヤツについて、ここで一つ疑問を投げかけてみます。

『そもそも、迅速検査って、真実の感染者を正確に見抜けるのでしょうか』

 

・・・答えは『NO』です。

そもそも、陽性にでたら100%その病気にかかっていますなんていう検査は、正確な言い方を言えばありません。

あるのは、陽性にでたらその病原体がそこにいる(もしくはいた)可能性が高いという事実であり、検査の種類によってその正確性が異なるということだけです。

 

溶連菌で言えば、咽頭培養検査は検査の結果が帰ってくるまでに時間がかかりますが、陽性にでたら病原体がそこにいる(いた)可能性がとても高いです。

反対に溶連菌の迅速検査は、検査の結果が出るまでの時間は短いですが、溶連菌を持っている人を正確に陽性で検出する能力は培養よりも低いです。

一般的に迅速検査は培養と異なり、病気がある人を正確に診断する能力は低いんですね。

つまり、迅速検査が陰性にでたとしても、ある一定の確率でその病気を持っていたりすることがある、ってことですね。

 

今回は、溶連菌の迅速検査が、溶連菌に感染している人をどれくらい正確に”陽性”と検出できるか、について論文を集めて議論したシステマティックレビューをご紹介したいと思います。

さて、今回の主役に登場して頂きましょう。

Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jul 4;7:CD010502. PMID: 27374000

Rapid antigen detection test for group A streptococcus in children with pharyngitis.

Cohen JF, et al.

 

では見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

溶連菌感染症(GAS)は、小児咽頭炎の症例の20〜40%を占めます。咽頭培養検査は時間がかかりますが、迅速抗原検出検査(RADT)は、5-10分以内で診断を提供します。

こんな背景の中、著者らは『咽頭炎の小児において、溶連菌感染症を診断するための迅速抗原検出検査(RADT)の診断精度を決定すること』を目的にレビューを行いました。

2つの主要なタイプの迅速検査⇒酵素免疫測定法(EIA)と光学免疫測定法(OIA)の診断精度を評価することもサブの目的として掲げました。

※以降では、迅速抗原検出検査=迅速検査として記載しています

 

方法-Method

データベース

CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、Web of Science、CDSR、DARE、MEDION、およびTRIPを1980年1月から2015年7月まで検索しました。

また、PubMedによる関連引用の追跡、含まれている研究の参考文献および関連するレビューの論文を手動で検索し、Google Scholarによって含まれている研究を引用したすべての研究をスクリーニングしました。

 

適格基準

下記の研究が今回のレビューに適格な論文とされました。

適格基準はこれ!

外来治療で見られた子供たちの微生物検査室で、血液寒天プレート上での咽頭培養と溶連菌咽頭炎に対する迅速検査を比較した研究であること

つまり咽頭をぬぐった液体を血液寒天プレートで培養して溶連菌が生えた=『真の溶連菌感染症』として、迅速検査の結果と比較して

どれくらい迅速検査が培養検査の結果に迫れるかをみた研究という事ですね。

 

データ収集と分析

2名の研究者が独立して研究のタイトルと要約をスクリーニングし関連性があるかどうかを考えました。

メタアナリシスに含めるかどうかについては全文を評価しました。また、QUADAS-2ツールを使用して論文の品質評価を行いました。

 

著者らは、感度および特異性の要約を評価するために二変量メタアナリシスを行いました。また研究間の異質性も調査していました。

間接的および直接的なエビデンスを用いて、EIAとOIAテストの精度を比較しました。

 

結果-Results

レビューには98件の研究が適格と判断されました(116件のテスト評価; 101,121人の参加者)

含まれた研究の全体的な方法論の質は低かったと評価されていました。

多くの研究が患者の選択および使用された参照標準に関してバイアスのリスクが高いためと説明されていました(それぞれ、テスト評価の73%および43%)。

以下に結果を示していきます。

 

結果①

全参加者が迅速検査と咽頭培養の両方を受けた研究(105件のテスト評価; 58,244人の参加者; 溶連菌の有病率の中央値 29.5%)において、

・迅速検査の感度は85.6%だった。[95%信頼区間(CI); 83.3-87.6]

・迅速検査の特異度は95.4%だった。[95%信頼区間(CI); 94.5-96.2]

特異度は研究間で統一性がありましたが、感度はかなりの不均一性がありました。

感度と特異性の間にトレードオフの証拠はありませんでした。

精度の不均一性は、プレーティング前に濃縮培養液を使用したかどうか、参加者の平均年齢および臨床的重症度、ならびに溶連菌の有病率などの研究レベルの特徴によっては説明されませんでした。

 

結果②

酵素免疫測定法(EIA)と光学免疫測定法(OIA)の感度は同程度だった。(感度85.4%対86.2%)

 

 

結論-Conclusions

溶連菌を除外するための独立した検査として迅速検査を使用できるかどうかは、主に疫学的状況によって異なります。

酵素免疫測定法(EIA)と光学免疫測定法(OIA)の感度は同程度のようです。

迅速検査の特異度は、不必要な抗生物質の使用を防ぐのに十分なほど高かったです。

これらの結果に基づいて、著者らは溶連菌感染性咽頭炎を持つ100人の子供たちのうち86人が迅速検査で正しく検出される一方、14人は見逃され抗生物質治療を受けないであろうと予想しました。

 

なにが分かったか

我々小児科医を含めて医師が知っておくべき知識の一つに”検査の限界”というものがあります。

”この検査はどこまで何が分かるのか”ということですね。今回の迅速検査のレビューの結果もその一つでしょう。

とはいっても、感度・特異度がともに100%の検査はないと考えれば、感度が85.6%で特異度が95.4%というのはそこそこ良い値のように感じます。

溶連菌感染症で『ある』人を85.6%の確率で陽性と判断でき、溶連菌感染症で『ない』人を95.4%の確率で陰性と判断できるということですから、それなりに確率された精度と言っても良いのではないでしょうか。

 

今回は以上となります、何かの役に立てば幸いです。

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