こんな症状、あなたならどうする? 雑記

Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンは効果絶大!おたふく風邪のワクチンも早く定期接種にならないかな??

こんにちはDr.アシュアです。昨今、予防接種の数もとても多く、お母さんはとても大変です!全部打ち終わるまでにどれだけ病院に行かなければいけないのか…と思われている方も多いでしょう。

たくさんあるワクチンですが、幼いお子さんの命を守るためにとっても大事です。今回は筆者も感じているHibワクチン・肺炎球菌ワクチンの効果の話と、意外に怖いおたふく風邪とワクチンのこと(早く定期接種になってほしい!)をお話ししましょう。

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~ワクチンに関する基本的な考え~

・ワクチンで防げる疾病は防いだ方が良い

 多くの人がかかる可能性がある

 放置すれば健康被害が増大する⇒本人だけではなく次世代への影響

・費用負担は収入により差がつかないように、税金で皆で負担する(定期接種)

・本人、保護者の理解、意思の尊重

・100%の効果、安全性ではないので、効果・安全性に関するモニターが必須

・万が一の健康被害は、疾病から免れることができた皆で負担

ワクチンが作られている病気は、多くの人がかかる可能性があり、放置すれば健康被害が増大し、本人だけではなく次世代への影響が大きいものです。いわゆる定期接種や、市が認めていて補助金がでるタイプの任意接種は、税金で賄われているわけなので、費用はみんなで負担していることになります。つまり収入の多い少ないで打てない人が出ないようにみんなで負担を分け合おうねという考え方なわけです。

さらに、本人(年少児は難しいですが)、保護者の理解・意思の尊重のもとに打つことを決めるわけですから、強制ではありません。皆さんの周りにももしかすると『私は予防接種を受けさせない主義です』というお母さんもいるのではないでしょうか。

もちろん100%の効果、安全性ではないので強制的に打ちましょうということではありません。そして万が一生じてしまった健康被害(300万回に1回というデータもあります)は、病気から免れることができた皆で負担しましょうという理念で、国の救済制度があります(財源は税金ということですね)。

さらに重要なことは、任意接種でも万が一の健康被害があった場合は(独)医薬品医療機器総合機構による救済制度があるということで、日本で正式な手続きを踏んだ予防接種であれば定期であろうが任意であろうが、万が一の時にも保障はされるということになります。

 

Hibワクチン・肺炎球菌ワクチン接種後の死亡例報告検討会にて

Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン、この2種類のワクチンはとても有用です。私が医者になった頃はまだこのワクチンが出始めた頃、つまり打つのに実費が必要だった時代で、髄膜炎、喉頭蓋炎といった命の危険に直結するあまり見たくない病気にかかるお子さんが年数人いました。しかしこの2種類のワクチンが始まり、市からの補助金が出るようになり、定期接種になり、接種率が上昇してからは、この2種類の病原体による髄膜炎、喉頭蓋炎はほとんど見なくなりました

当院は1次~3次まで担当しているいわゆる地域基幹病院ですから、周辺で発生した重症疾患はほとんど集まってくる場所です。そこで働いている自分が確実にこの変化を肌で感じているので、この2種類のワクチンはかなり強力であることは間違いないです。私は、生後半年前後までのお子さんが発熱で受診した時には、必ずこの2種類のワクチンをしているかどうかを問診するようにしています。

ただ、上でも書いたように100%安全なワクチンはありませんから、重篤な合併症を起こした患者さんについては、しっかりと検討をすることが必要です。

Hibワクチン・肺炎球菌ワクチン接種後の死亡例報告検討会での情報を知る機会があったのですが、報告された7例の死亡例については、現段階の情報においていずれもワクチン接種との直接的な明確な因果関係は認められない、との結論でした。

そして、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチン(PCV7)いずれも、米国での使用成績に関する論文、企業が収集した有害事象報告において接種後に一定頻度の死亡例が報告されていますが、いずれも大半は感染症やSIDSが最終的な死因とされており、ワクチンとの因果関係は明確ではないとの結論でした。

こういった情報や、今自分が勤務している中で感じている実感から、Hibワクチン・肺炎球菌ワクチンは必ず接種することをお勧めします。生後2-3か月には打たなければいけないワクチンが多いですが、どれか1個だけしか打てないと言われたら、私はHibワクチンを選びます(Hib感染症は重症なものだと髄膜炎、喉頭蓋炎を起こします)。

 

おたふく風邪で耳が聞こえなくなる!!?

話は変わって今後は、おたふく風邪=ムンプス感染症です。この感染症に対するワクチンは任意接種で、日本での接種率は低く、今でも周期的に感染の流行が訪れており当院でも毎年多くの患者さんが受診しています。

日本では、全国で指定を受けた複数の小児科で毎年おたふく風邪が発生した数を調べて、それを全国で集計して、『小児科定点当たりの報告数』を出しているのですが、おたふく風邪の報告数を1982年-2017年間で見てみると、約4-6年周期で増減を反復していて、全く減っていません。

予防接種はみんなで打たないと、意味がない。ということですね。しかもおたふく風邪は1回の予防接種で60-70%の予防力しかないので、2回打たないと有効な予防ができません。

 

おたふく風邪は意外に怖い感染症で、耳の聞こえが悪くなる=難聴という合併症を起こすことがあります。2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査を見るとその怖さがわかります。これは、日本耳鼻咽喉科学会・乳幼児委員会が、近年の流行性耳下腺炎(おたふく風邪のことです)の流行による合併症のムンプス難聴症例を全国の耳鼻咽喉科医療機関に対して調査したものです。

2015-2016年の2年間で少なくとも348人が難聴となり、詳細が明らかな336人を検討した。

片測難聴が317人、両側難聴が16人で、そのうち274人(約80%)は高度以上の難聴が後遺症として残っていた。

片測難聴の人で詳細な情報があった287人中、236人が重度難聴、25人が高度難聴だった。

片測難聴だと音がどこから聞こえてくるのか分かりにくく、声をかけられても気づかないことがある。ザワザワした中だと人の声が聞こえないため、補聴器を装用するようになった人もいるようです。

両側難聴の16人中、9人が重度難聴、4人が高度難聴になり、合計13人が両側高度以上の難聴が後遺症となり、日常生活に大きく支障をきたした。

2015-2016年にかけて発症したムンプス難聴の大規模全国調査より

おたふく風邪にかかっていて、ある朝目覚めたら片耳が聞こえない、両耳が聞こえない、、ってかなりの恐怖です。

ワクチンでの副作用で危惧されるのは、無菌性髄膜炎ですが、普通におたふく風邪にかかった場合の無菌性髄膜炎のリスクが1-10%に対し、ワクチンの副作用の無菌性髄膜炎は0.1-0.01%で、より少ないですし、基本的には臨床症状は軽く自然に治るケースがほとんどですから、個人的にはそんなに問題ないと思います。逆に副作用として比較的良くあり気を付けた方がいいのが耳下腺の腫脹で、これは接種後3週間前後に2-3人/100人の割合で起こると言われています。

 

おたふく風邪ごときで耳が聞こえなくなったらとても怖いことですよね。私は予防接種をお勧めします。そして、定期接種にしないと結局周囲でおたふくが流行しますから、予防接種していたとしても感染してしまう危険にさらされます。やはり任意接種ではなく、定期接種化することが絶対的に必要だと思います。

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