こんな症状、あなたならどうする?

ハチミツを咳止めとして使った時の効果はどのくらいか?

こんにちは、Dr.アシュアです。

咳に対して自宅で行える薬に頼らない治療、ハチミツ。ご存知でしょうか。

民間療法の中ではエビデンスがあり、小児科医なら知っている医師も多いのがこの”咳にはハチミツ”です。

今回は、この”咳にはハチミツ”に関するコクランレビューでupdateが出ていたのでご紹介したいと思います。

updateというのは、以前にもあったレビューにさらに最近の知見を加えて刷新すると言う意味です。

 

さあ、主役に登場してもらいましょう。

Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10;4:CD007094. PMID:29633783

Honey for acute cough in children.

Oduwole O, et al.

咳には効く、のは知っていたけど、”どれくらい効果があるのか”は知らない、という人には必見です。

さあ、見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

咳は両親に不安を与え、外来診療の主な原因になります。咳は、生活の質に影響を及ぼし、不安を引き起こし、そして子供およびその両親の睡眠に影響を及ぼすことがあります。

ハチミツは咳の症状を軽減するために使用されてきました。

今回のレビューは、2014年、2012年、および2010年に公開されたレビューの更新版です。

 

そしてこのレビューの目的は、『外来における子供の急性の咳に対する、ハチミツの有効性を評価すること』です。

 

方法-Method

検索方法

多くのデータベースが検索の対象になっていました。

・Cochrane Acute Respiratory Infections GroupのSpecialized Registerを含むCENTRAL(2018, 2号まで)

・MEDLINE(2014年~2018年2月8日まで)

・Embase(2014年~2018年2月8日まで)

・CINAHL(2014年~2018年2月8日まで)

・EBSCO(CBS) 2014年~2018年2月8日まで)

・Web of Science(2014年~2018年2月8日まで)

・LILACS(2014年~2018年2月8日まで)

のデータベースを検索しています。

また、2018年2月12日にClinicalTrials.govとWHOの国際臨床試験登録プラットフォーム(WHO ICTRP)も検索されていました。

2014年のレビューにはAMEDとCABの要旨の検索が含まれていましたが、今回はアクセスが出来なかったために検索に含まれませんでした。

 

選択基準

収集された研究の選択基準は以下の通りでした。

研究の適格基準はこれ!

・ランダム化比較試験であること

・12か月~18歳の小児を対象としていること

・急性の咳嗽に対して、ハチミツorハチミツと抗菌薬の群と、無治療orプラセボorハチミツベースの咳止めシロップ群とを比較した研究であること

 

データ収集と分析

標準コクランレビュー方法論に従ってデータ収集と分析が行われました。

 

結果-Results

データベースから296件の研究、その他の検索方法から25件の研究がヒットしましたが、諸々の除外を受けて最終的に、899人の小児を含む6つのランダム化比較試験が選定されました。

このアップデートには3件の研究(331人の小児)が追加されました。

 

研究でハチミツと比較されたのは、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、サルブタモール、ブロメリン(パイナップルの酵素)、偽薬(プラセボ)、無治療でした。

 

5件の研究で、咳嗽の症状軽減を測定するために7点リッカート尺度が使用されました。

リッカート尺度とは?

リッカート尺度とは、ある薬を使用したときの効果について

とてもよく効いた(1点) よく効いた(2点) 少し効いた(3点) 変わらない(4点) 少し悪くなった(5点) 悪くなった(6点) とても悪くなった(7点)

のように質問紙を作り、咳止めとしての効果を数値化することで、統計学的検証をしやすくするための評価尺度の一つです

 

結果①

7点のリッカート尺度を使用すると、蜂蜜は無治療またはプラセボよりも咳の頻度を減らすことができた

(無治療: 平均差(MD) -1.05, 95%信頼区間(CI); -1.48〜-0.62; I2 = 0%; 2件の研究; 154人; エビデンスの質は中等度)

(プラセボ: MD -1.62, 95%CI; -3.02〜-0.22; I2 = 0%; 2件の研究; 402人; エビデンスの質は中等度)

 

結果②

ハチミツは、咳を減らすのにデキストロメトルファン(メジコン®)と同等の可能性がある

(MD -0.07, 95%CI; -1.07〜0.94; I2 = 87%; 2件の研究; 149人; エビデンスの質は低い)

結果③

ハチミツは、咳を減らすのにジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬)よりも優れている可能性がある

(MD -0.57、95%CI -0.90〜-0.24; 1件の研究; 80人; エビデンスの質は低い)

 

結果④

ハチミツを最大3日間摂取した場合に、プラセボorサルブタモール(喘息の吸入で使うβ刺激薬)と比較して、咳を減らす点に関して有益であった

3日を超えると、咳の重症度、ひどい咳、および睡眠中の咳の影響を軽減することには有益ではなかった

(エビデンスの質は中等度)

 

有害事象については、以下の報告がありました。

ハチミツを与えた小児7例とデキストロメトルファンを与えた小児2例の親がそれぞれの児について、寝つきの悪さ、落ち着きのなさ、過度の興奮状態などの副作用について報告した。

サルブタモールを投与した小児9例、ハチミツを投与した小児7例、プラセボを投与した小児6例の親が下痢を報告した。

サルブタモールを投与した小児4例とハチミツを投与した小児1例の親が発疹を報告した。

 

結論-Conclusions

ハチミツはおそらく無治療、ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン薬)、およびプラセボよりも大幅に咳の症状を和らげます。

ハチミツは、デキストロメトルファン(メジコン®)と比較するとほとんど違いがないと思われました。

ハチミツは、おそらくプラセボやサルブタモール(喘息の吸入で使うβ刺激薬)よりも咳の時間を短縮します。

ハチミツの使用に対する強力な賛成または反対のエビデンスはありませんでした。

月齢12カ月までの乳児は免疫が弱く、ハチミツに細菌がいた場合に麻痺を引き起こす可能性があるので、ハチミツを与えることは推奨されません。

大部分の子供たちは一晩のみ治療を受けており、これはこのレビューの結果の限界と言えます。

 

なにが分かったか

有害事象もないわけではないけれど、1歳より大きいお子さんに対しては、ハチミツは一定の咳止めの効果がありそうです。

その咳止めの強さとして、メジコンと同等だというのはそれなりに強い鎮咳効果があると言えるでしょう。

メジコンは、中枢性の鎮咳薬というカテゴリーの薬剤で、最近は効果が強く無呼吸などの副作用が怖いので、小児には使うことが好ましくないというデータが出てきている薬剤です(成人では良く使用されています、僕も飲みます)。

 

そしてハチミツの使用に対して反対のエビデンスはないのですが、大体の研究が一晩のみの使用で評価をしている点は気になりますね。

ハチミツを長期的に使用した場合に副作用がないかどうかは、分かっていないということは大事でしょう。

現状、ハチミツを咳止めとして使うとしたら、ここぞという時に短期で使用というのが落としどころなのかもしれません。

今後の研究が俟たれるという所でしょうか。

研究の選択によって選出された論文のエビデンスの質が低かったのも、ちょっと気になりますね。

 

追記-

レビューの中で選択基準を満たしていた論文6件に直接あたり、ハチミツの投与量について調べてみました。興味がある方はご参照ください。

CHECK
咳をしている子供へのハチミツ投与 その投与量とは?

前回は、コクランレビューからハチミツの咳への効果についてのシステマティックレビューをご紹介しました。 Twitterでも沢山の反響を頂き、細々とブログを続けている身としては本当に嬉しい限りです。 &n ...

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今回は以上となります。何かの助けになれば幸いです。

 

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