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人工甘味料がこどもの健康に与える影響について

こんにちは、Dr.アシュアです。

今回は人工甘味料についての論文をご紹介します。

人工甘味料とは”摂取すると甘味を感じる人工的な合成物”のことです。

有名どころではダイエットコーラなどに含まれている、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロースといったものです。

天然甘味料は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖といったもので、こういった糖類は摂取すれば消化吸収され、”カロリー”になります。

しかし、人工甘味料は人体では消化吸収できないため、摂取してもカロリーになりません。それ故、ダイエット食品に含まれることが多いわけです。

ただし、人工甘味料はものによっては人体に有害であると認定され、食品への添加が禁止されたものもあります(ズルチンなど)。

検索してみると、アスパルテームに関しては、フリーラジカルを増加させて、全身の酸化ストレスを増やす、インスリン抵抗性を上げるとする論文も見つかりました。Aspartame: Should Individuals with Type II Diabetes be Taking it?

 

色々な議論が今だ続けられている所ですが、人工甘味料については子どもにはあまり摂らせたくないという風に考えている方が多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、そういった人工甘味料が人体に与える影響についての大規模なシステマティックレビューです。

さて、主役に登場してもらいましょう。

BMJ. 2019 Jan 2;364:k4718. PMID: 30602577

Association between intake of non-sugar sweeteners and health outcomes: systematic review and meta-analyses of randomised and non-randomised controlled trials and observational studies.

Toews I, et al.

BMJという大御所の雑誌に投稿された論文です。成人と小児で項目を分けて検討されていましたので、分けて解説していきます。

さあ、見ていきましょう。

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背景と目的-Background and Objective

健康な成人・小児または過体重/肥満の成人および小児において、非糖甘味料(NSS)の摂取が健康に影響を与えるかどうかを評価すること、が今回の目的です。

非糖甘味料は人工甘味料と同義とされることもありますが、今回のシステマティックレビューでの定義は、人工甘味料と天然のカロリーにならない甘味料を合わせたカテゴリーです。

人工甘味料は前述したとおりアスパルテームなどの人工的に合成された食品添加物であるのに対して、”天然のカロリーにならない甘味料”もあります。例えば、中国・桂林に自生するウリ科の果実「羅漢果」と言ったものが代表的です。

今回検討しているのは狭義の人工甘味料に近い概念ですが、完全に一致しているわけではない点は大事なところです。

 

方法-Method

デザイン

標準コクランレビュー方法論に従った系統的レビューです。

 

データソース

Medline(Ovid)、Embase、Cochrane CENTRALが、電子的検索を行われました(最後に検索されたのは2017/5/25)。

進行中や終了したが未発表の研究を検索するために、WHO国際臨床試験登録プラットフォーム、Clinicaltrials.govが検索されました。

および関連する文献の参考文献は、手動で検索されました。

 

適格基準

選ばれる研究の適格基準は以下のものでした。

研究の適格基準はこれ!

・太りすぎまたは肥満の有無にかかわらず、一般に健康な成人または子供を含む研究

・非糖甘味料の無摂取or低摂取群と、非糖甘味料の高摂取群との直接比較をした研究

・使われている非糖甘味料が明確に示されていること、容量は許容される一日摂取量以内であること、そして介入期間は少なくとも7日間であること

 

メインアウトカムとして測定した因子

体重またはBMI、血糖コントロール、口の中の健康状態、摂食行動がメインの結果として測定されました。

その他の副次的な観察項目は、甘味の好み、あらゆる種類の悪性疾患(いわゆるがん)、心血管疾患の発生率、慢性腎疾患の発生率、喘息の発生率、アレルギーの発生率、気分、行動、神経認知能力でした。

また、非糖甘味料の副作用について測定されていました。

 

上記のデータベースの検索は、複数人で独立して行い、結果に意見の相違があった場合には、第三者が介入して討論していました。

適格となった論文については、バイアスの評価が行われ、最終的にメタアナリシスされた結果についてはGRADEアプローチにてそのエビデンスの質が評価されていました。

 

結果-Results

検索の結果13941の論文が見つかりました。色々な除外を受けて、最終的に56件の研究がメタアナリシスを行うために残されました

そのうち21件がランダム化比較試験で、35件は観察研究でした。

以下に結果を示していきます。

 

結果①

少数の小規模研究からの結果から、BMI・空腹時血糖値に対して非糖甘味料のわずかな有益な効果が認められたが、

エビデンスの質は非常に低かった。

BMI(平均差 -0.6, 95%信頼区間: -1.19~-0.01; 2件の研究, n=174)

空腹時血糖(平均差 -0.16 mmol/L, 95%信頼区間: -0.26~-0.06; 2件の研究, n=52)

 

結果②

より低い用量の非糖甘味料は、より高い用量の非糖甘味料と比較してより低い体重増加だったが、

これもエビデンスの質は非常に低かった。

体重の変化(平均差 -0.09 kg, 95%信頼区間: -0.13~-0.05; 1件の研究, n=17934)

 

他の全てのアウトカムについては、非糖甘味料の使用と非使用の間、または異なる用量の非糖甘味料の間に差は検出されませんでした。

 

結果③

過体重または肥満の成人・小児で、積極的に体重を減らそうとしている集団に対して非糖甘味料は、何も影響を与えなかった。

(非常に低い~中程度のエビデンスの質)

 

結果④

小児では、糖分摂取群と比較して、非糖甘味料群のほうが肥満度指数zスコアのわずかな増加が観察された

(平均差 -0.15, 95%信頼区間: -0.17~-0.12; 2件の研究, n=528, 中等度のエビデンスの質)。

しかし体重では有意な差は認められず(平均差 -0.60 kg, 95%信頼区間: -1.33〜0.14; 2件の研究, n=467, 低いのエビデンスの質)、

異なる用量の非糖甘味料の間でも有意な差は認められなかった(非常に低い〜中程度のエビデンスの質)。

 

結論-Conclusions

結果①~④から考えると、今回レビューで取り扱ったほとんどの健康上の問題については、非糖甘味料の曝露群と非曝露群との間に違いはないようでした。

 

なにが分かったか

かなり新しいシステマティックレビューでしたが、ほとんどの健康上の結果では、非糖甘味料の曝露群と非曝露群との間に違いはないようだ、という結果でした。

しかし、僕がこの論文を読んで感じた意見はちょっと違います。人工甘味料の研究自体にまだまだ課題がありそうだ、ということです。

論文中にも書かれていましたが、問題点としては以下のことが挙げられます。

今回のレビューの問題点

・そもそも研究の数がまだまだ少ないこと

・ほとんどの研究が参加者が少ないこと

・研究の観察期間が短期間であること

・研究の方法論・質が高くないこと

これらの事実から、”現在世に出ている研究を統合して検討してみると、非糖甘味料の曝露群と非曝露群との間で健康上の問題において大きな違いはない”という結果が出たが、”本当の意味で人工甘味料が安全か”については、未だにほとんどわかっていない”、と言ってもよいと思います。

今現在の研究レベルで真実のリスクが分かっていないということを認識するということはとても大事なことです。

リスクが否定できないものは、避けたくなりますよね。

個人的には、やはり子ども達には、人工甘味料、必要でなければあまり与えたくないと感じました。

今回は以上となります。何かの助けになれば幸いです。

 

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